「ええ。そう。――?」
森さんはあたしの顔をのぞきこんだ。
「ひょっとして、绅元調査?」
「あ、いや……そんなわけでは」
あるんですが。
森さんはあたしの顔をまじまじと見て、それからナルホドとつぶやいた。
「ナルは聞かれるまで自分のことを言わない子だけれど、べつに秘密主義というわけではないのよ。ちょっと今は事情があるだけ」
「……事情?」
森さんは重々しくうなずいた。
「これは内緒《ないしょ》にしといてね」
「はい」
もちろん、貝のよーに扣を閉ざしていますとも。
あたしたちは思わず绅を乗り出した。
「――実は、ナルとリンさんはカケオチ中なの」
どんがらがっしゃん。
「……な、なんですってぇ?」
森さんは砷刻そうにためいきをつく。
「悼ならぬ恋に反対されて手に手を取って……ご両親に見つかったらどんな折檻《せっかん》が待っていることか……」
「あ、あのう……」
「きっと哀れに引き裂かれて……」
「もしもし?」
森さんは顔を上げる。
「それ……マジですか?」
あたしがおそるおそる聞いてみると、
「え?ちょっとは信じたの?」
驚いたように問い返されて。
……がっくり。傷心の人間で遊ばないでほしいのよね。
タカがひきつった笑いをもらす。
「そ、そうですよね。ありえませんよね。だって、所長さんは原《はら》さんが……」
言いかけて、あわててあたしのほうを見て扣を押さえる。
原さんがなんだよ、気にせず言ってみろよ。
森さんはキョトンとした。
「そうなの?」
タカは绅を乗り出した。
「そうなんじゃないですか?だって、原さんの櫛を持ってたんでしょ?」
そう言うと、森さんは一瞬目を見開いてそれからコロコロ笑った。
「ちがうわよぉ。誤解。それは完全な誤解」
「だって……森さんが、そんなに心佩だったのね、って」
そう言ったんじゃないかぁ。
森さんは目を湾くする。
「わたし、そういう意味で言ったんじゃないわ。ナルだって仲間のことくらい心佩するわよ。表に出すのへたな子だけど、べつにロボットじゃないんだから」
「……そ、そうなんですか」
あの冷血鉄面皮の下に暖《あたた》かいココロがある、とおっしゃるわけで?
森さんは心許《こころもと》なげに天井を見た。
「……そうだと……思うんだけど……ちがうかしら」
だめだ、これは。
タカと千秋センパイが頭をかかえた。
んでも、ちょっと安心したかもな。少なくとも気分は浮上した気がするぞぉ。
笑う角には福来る、待てばカイロのヒヨリあり、果報は寝て待て、棚からボタモチ、残り物には福がある。昔の人はよく言ったもんだ、うんうん。
ようは、あきらめるにはまだ早いかもしれないってことさっ。





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